小川一水

 和泉君に薦められていたのだが、ようやっと手が出た。

 すまん、すげーおもろい。もっと早く読めばよかった(汗
 なによりちゃんとしたSF然としてる(意味不明)なところが良い。SFは現状、黄昏ているといっていいが、こういう若手が出ていると知ると安心だ(偉そう
 若干感想というか戯言を。
 

  • ギャルナフカの迷宮

 些細な罪で地下迷宮に放り込まれてしまった教師。そこは人を人として信じられない罪人たちの群れ集う迷宮だった。
 ゲーム理論じみた厳しい環境と、それを突破するべく「人間社会」を迷宮で築きなおそうとする主人公が、苦労しつつも成功していく過程が心地よい。社会派SFというのか、こういうのはたしかル=グィンの作品に多かった気もします。こういった作品は現状の社会とは性質が異なる(そこがSFな所以)ところが大事で、その描写に時間がかかるのが普通ですが、中篇にしては非常に良い取り扱いだと思います。
 

  • 老ヴォールの惑星

 ホット・ジュピター型惑星*1で発生、進化した珪素生物が、自分の住んでいる惑星を破壊できるほどの彗星の衝突を前に、彼らが最も重要としている「種の知識と経験」をほかの惑星に伝えるべく努力する。
 惑星ヴォールに存在するこの珪素生物たちの生態や描写は素晴らしい。龍駆的には、彼らのビジュアルイメージがガス雲を飛行するクジラのように思えてしまうのですが、表紙を見るとだいぶ違うなぁ(笑 食べればいくらでも育つが、重くなりすぎたり、嵐に巻き込まれたりして、飛行できなくなると死んでしまうところが切ない生なのも、龍駆的にはツボ。
 

  • 幸せになる箱庭

 木星から資源を採取しつづける異性人の自動機械。その存在を知った人類は、質量減少による木星の軌道偏差から発生する、太陽系崩壊の危機にも気がつく。木星の資源採取を中止するよう、異性人との交渉を行うため、人類は使節団を派遣する。
 タイトルや前半での挿入話から、仕掛けには「おっとこれは?」とすぐ気がつくと思う。お話のメインは主人公と異性人との交渉であろう。ていうか、この異性人、伝承族?伝承族だよね?(笑 異性人に伝承族のイメージが付いてしまったせいか、オチはあんまり許せない(笑 さりげなくリングワールドも出てきます。
 

  • 漂った男

 異世界惑星で戦略偵察機からベイルアウトしたパイロットは、全面積が海の惑星で、漂いつづける。海水に適度な温度、栄養があるため、死にはしないものの、全海面の惑星のため、ランドマークもなにもなく、位置が測定できないため救助は事実上不可能。唯一「発信源を逆探知できない通信機」を友に、救助隊の中尉や妻に支えられつづけながら、何年も漂流しつづることとなる。
 なんつうか、主人公を「生きていけるが助けられない」環境に追い込むための仕掛けが絶妙。これで他の人間と会話できるとこがまた絶妙(笑 このため、絶望することもなく、社会ともコミュニケーションをとりつつも、主人公は漂流するというなんとも不思議な状況が発生する。このアイデアだけでゴハン3杯はイケます(意味不明)ギャルナフカの迷宮でもそうですが、人と社会とのかかわり、というのがこの作者の好きなテーマなのではないかとー。主人公の心理状態がよく書かれていて、読んでいて引き込まれる。
 
 という具合に楽しかった。他の作品も呼んでみようかしらん(^^

*1:っていうのはこの小説ではじめて知った